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ウルトラランナーの食事サポート

3月から大会直前までウルトラランナーを食事でサポートしていきます。ウルトラマラソンに挑戦するにあたり、体ばかりを鍛えることに集中していませんか?強靭なウルトラランナーの体作りを行っていくには食事は欠かせません。食コンディショニングプロデューサーの小島 美和子(おしま みわこ)さんに練習期から本番まで、具体的に食事のアドバイスをしていただきます。


小島 美和子(おしま みわこ)

有限会社クオリティライフサービス 代表取締役
管理栄養士 産業栄養指導者 健康運動指導士 ヘルスケアトレーナー
食コンディショニングプロデューサー
 
働く人の食生活改善保健指導プログラム・各種食教育ツールなどの企画開発を行い、TV企画でのダイエット指導をはじめ、TV、ラジオ、雑誌への出演、各種研修講師等も多数担当。また、健康商材・サービスの価値、訴求力を高めるコンテンツ、プロモーションのコンセプトづくりから、より効果を出すプログラムの開発、へルシーメニュー企画・開発サービスまで、管理栄養士の専門性を活かした食生活の現場でQOLを高める事業を展開。
「健康指導者は実践者に!健康の表現者をめざします!」をモットーに食×ランニングでよりよいコンデションづくりを目指す。

最終回 

 
いよいよ大会直前となりました。
コンディションはいかがですか?
これから先は、疲れをとって気持ちよく本番を迎えられるように、時間に少し余裕をもってリラックスして過ごしましょう。
 
今回は大会直前と、当日の給食と給水についてアドバイスします。
 

当日まで糖質をしっかりとる

当日までにしっかり体内に蓄えておきたいのは糖質です。糖質は肝臓と筋肉にグリコーゲンという形で蓄えることができ、この蓄えが多いほど、スタミナは持続します。普段は、食事でとった糖質を次の食事までに消費する食べ方が基本ですが、大会前は貯蔵分を含めちょっと多めに食べるのがポイントです。ご飯の量を少し増やす、食事と食事の間で、おにぎりや餅、パンなどを食べるとよいでしょう。
ただし増やすぎるとからだが重くなり、走りにくくなるので注意してください。また、筋肉量が少ない人は貯蔵できる量も少ないので、自分のからだに合わせて調整してください。
 

大会当日の朝は糖質+脂質をとる

当日の朝は、糖質に加えて脂質もとります。脂質を一緒にとった方が、糖質をゆっくり使うことができてスタミナが持続します。焼きそばや菓子パン、チャーハンなどでもよいでしょう。
 

水分はこまめにとる
スタート前は糖質の多い飲料を控える

のどの渇きを感じた時は、すでに脱水に近づいています。体感に頼らず、こまめに給水しましょう。
ただし、スタート前や直後に甘い飲料を飲むと、その後に血糖値が急降下してだるさや眠気を招くことがあります。さらに、体内の脂肪がエネルギー源として使われにくくなるので、持久力が低下します。スタート前にしっかり食べておいて、しばらくは甘みの無い水で水分を補給しましょう。
空腹を感じている時に甘い飲料を飲むと、前に書いた状態になります。空腹になる前に給食をとり、甘い飲料はスタミナが切れてきた後半のエネルギー源ととるのがおすすめです。
 

空腹になる前に給食をとる

空腹を感じてから給食をとると、その後にだるさを招く、とったカロリーが走るエネルギーとして使われにくくなる、などの理由でペースダウンしてしまう可能性があります。空腹を感じる前に、給食をとりましょう。一度にたくさん食べると消化器に血液が集中してしまうので、少量ずつこまめにとるのがおすすめです。
 

果物や梅、漬物などでミネラル補給

エイドには、果物や梅、漬物、塩などがあります。水分と合わせて、カリウムやナトリウムを補給しましょう。
熱中症の予防や、脚のけいれんの予防につながります。特に後半はしっかりとってゴールを目指しましょう。
 
4回シリーズでお伝えした食事サポートはこれで最終回です。
皆さんがよいコンディションでスタートラインに立ち、充実した100kmを過ごされることを祈っています。
頑張ってください!

第3弾 栄養密度の高い食事

いよいよ大会まで1か月となりました。今から重要なのは大会当日までのコンディションづくりです。身体の手入れと同時に何をどう食べるかが、疲れや不安のないベストコンディションで大会を迎えるために重要な要素となります。これから1か月間、毎回の食事を少し意識してレベルアップしていきましょう。
 

主食・主菜・副菜を揃える

朝、昼、夕の3食で、主食(穀類)・主菜(肉・魚・卵・大豆製品)・副菜(野菜・きのこ・芋・海藻)の3皿が揃った食事は1日の中で何食ありますか?細かい栄養素を考える前に、まずは3食とも3皿を揃えることを意識しましょう。
主食・主菜・副菜という表現はありきたりに感じられるかもしれませんが、実は、日本人特有の栄養バランスを整える最強のルールなのです。この3皿がとれて初めて、栄養バランスの基盤が整います。どの皿が抜けてもコンディションはダウンしてしまいます。どれもとり溜めはできないので、毎食とる必要があります。
細かい栄養素に目を向ける前に、食卓バランスを整えましょう。
 

主食:精製度の低い穀類を

主食の皿は、ごはんやパン、麺などの穀類で、糖質の供給源です。ランナーにとっては特に重要な栄養素なので、毎食しっかりとりましょう。
糖質制限が流行っていますが、糖質を減らすとからだの筋肉を削って糖をつくり、エネルギーを生み出すことになります。すると筋力や持久力が落ちるだけでなく、基礎代謝が落ちて脂肪がつきやすくなります。
糖質をエネルギーに変えるためにはビタミンB1を合わせてたっぷりとる必要があります。さらに、食物繊維を一緒にとることで血糖値の上昇スピードが緩やかになり、効率よくエネルギーとして使うことができます。穀類は精製する過程で、ビタミンや食物繊維が失われるので、できるだけ精製度の低い穀類を選びましょう。
玄米は胃腸に負担がかかるので、胚芽米や、五分づき米、麦入りご飯などにするとよいでしょう。胃腸の調子の良し悪しは大会の結果に大きく影響しますので、必ず自分の体調を見て調整してください。
 

主菜:低脂肪高たんぱく質を

主食の皿は、肉、魚、卵、大豆製品といった、たんぱく質食品です。筋肉や骨の再生に必要で、からだの抵抗力をつける上で欠かせません。たんぱく質の最小単位であるアミノ酸の構成によって、からだでの利用効率が違い、これをたんぱく質の質と言います。ソーセージ―やちくわなど、加工されるほど質は下がるので、できるだけ素材に近い形で食べましょう。
また、脂質の多いものはたんぱく質が少なく、高カロリーです。特に肉は種類によって大幅に違うので、ランナーはできるだけグラフの左側の種類を選んで食べましょう。

 

 

副菜:緑黄色野菜と旬の野菜をたっぷり

副菜の野菜や海藻、きのこ、芋はビタミン・ミネラル・食物繊維・抗酸化物質の供給源です。糖質や脂質をエネルギーに変え、体調を整える役割をするので、主食と主菜だけをたっぷり食べてもよいコンディションは保てません。
必要量をとるためには、1食に2皿程度あるのが理想です。3食は無理でも、昼食や夕食のどちらか1回は副菜2皿を目指しましょう。量をとるのが難しい場合は種類を意識しましょう。特に野菜は種類によって含まれる栄養素の量が大幅に違います。選ぶポイントは色の濃い緑黄色野菜と旬の野菜です。カット野菜より冷凍の素材野菜(ブロッコリーやほうれん草など)の方が栄養価は高くなります。

 
1回目は1日の食事のとり方、2回目は練習前後の食事について、食コンディショニングピラミッドの土台「どう食べる?」について、今回は、中段の「何を食べる」の部分、食事バランスについてお伝えしました。
土台が整っていなければ、中身を調整した効果は半減してしまいます。土台の見直しが必要な人は、ぜひ1回目と2回目のアドバイスを参考に土台から整えてください。
 

第2弾 練習前後の食事

第1回は、ウルトラマラソンに向けた食コンディショニングの基本についてお伝えしました。
朝、昼、夜の過ごし方、食事のとり方がコンディショニングのベースになります。新年度に入り、生活のパターンが変わった人も多いかもしれませんが、大会当日まで1日のリズムをできるだけ乱さず過ごすことを意識してください。
 
今回は、練習前後の食事のとり方についてお伝えします。
練習する時は、走る練習メニューだけでなく、前後の食事のとり方も事前に考えて準備しましょう。食事をセットにすることで、練習の効果が得られやすく、重要な疲労のコントロールやけがの予防にもつながります。
 

練習前:練習後までに必要なエネルギーをとっておく

「栄養は前どり」と覚えてください。よく「食事でリカバリーする」といいますが、後でできることは限られています。最も大事なことは、必要なエネルギーや栄養素を走る前にしっかりとっておくことです。こうすることでエネルギーに満たされた状態で練習することができ、練習の効果を最大限に得ることができます。
とる量は、どれくらい走るかによって違います。長時間走る場合は多めに、短時間の場合は少なめでもいいですね。例えば夕方走る場合、短時間の場合は昼食を多めにとっておけば大丈夫ですが、長時間走る場合は、走る1時間くらい前におにぎりやパンなどの食べておく必要があります。5時間以上の超ロング走をする時は、パスタやピラフ、焼きそば、サンドイッチ、チーズなど、油脂を含むものを食べておく方がエネルギーは長持ちします。途中で補給できる量は限られているので、事前にとっておきましょう。走りながら食べるグミやエネルギーバーなどの補給食も、空腹を感じる前にとりましょう。
量がちょうどよかったかどうかは、自分のからだで確認できます。ランニング中に空腹を感じる、集中力が切れるなら、前にとった量が少ないということです。次回は少し量を増やす、油脂を含むものをプラスするなど調整しましょう。
 

練習後:できるだけ早く糖質補給する

練習後はタイミングが重要です。できるだけ早く補給することで、使い切った糖質(グリコーゲン)を早めに補うことができるので、疲労が残りにくくなります。食事をとるまでに時間が空く場合は、おにぎりやパンにオレンジジュース、ゆで卵などを食べておきましょう。柑橘類に含まれるクエン酸を同時にとるとグリコーゲンが回復しやすくなります。
スピードを上げた、坂道などを走った時は、筋肉にも刺激が入っているので、たんぱく質も合わせてとりましょう。低脂肪の肉(鶏むね肉、ささみ、豚もも肉、ヒレ肉、牛もも肉、ヒレ肉など)、魚、卵などのおかずを必ずつけてください。たんぱく質が不足するとからだの抵抗力が落ちてしまいます。さらに筋肉が減りやすく、筋肉量減ると、走りにキレがなくなるばかりでなく、基礎代謝が落ちて脂肪が蓄積しやすくなります。
遅い時間に走ったとき、時間が遅いから食べない方がいいと思って食事を控える人がいますが、使った分は補ってから休みましょう。走った翌日の朝、疲労感が強い場合は、前日の食事の糖質が少なかったと考えられます。体調を見ながら、適度な量をみつけ、疲労のコントロールはしっかり行ってください。
 

食コンディショニング…体調を見ながら食事の量を調整する

練習前と後の食事のポイントを紹介しましたが、自分にぴったりと合う量や内容は、自分にしかわかりません。それはひとりひとりからだが違うので、代謝が異なり、練習量や強度も違うからです。ランニング中の空腹度や、からだの軽さ、集中力、翌朝の疲労感をしっかりと把握しながら、自分に合う食事をみつけてベストコンディションをつくることが、食コンディショニングです。
ベストコンディションとは、本来もっているポテンシャルを最大限に発揮できる状態です。ぎりぎり走れるようなゼロ地点では、心身の余力がなく、走りきれたとしても心から楽しむことができません。
ベストコンディションで大会を迎えられるように、練習と食事をセットで自分の食事スタイルを作りましょう!

第1弾 体内時計を整えてコンディションの基盤を底上げする

ウルトラマラソンを完走するには、練習をして走力をあげることも大事ですが、マラソンの倍以上の距離と時間を走りぬくためのコンディションづくりが重要です。
食コンディショニングで、自分のポテンシャルを最大限に引き出す、自分史上最高の体調をつくりましょう。
食コンディショニング®とは、自分のからだに合わせた食べ方で、最高のパフォーマンスをつくるメソッドです。
 

食コンディショニングの考え方:食事を整えるステップ

大会まで2か月ちょっととなりました。温かくなってきて、本番に向けて練習を積む時です。この時期に食生活で意識してもらいたいのは、食事のリズムです。
食事でコンディションを整えていくときは、優先順位があります。食コンディショニングピラミッドを見てください。まずは土台の「食事リズム」です。食べる時間やタイミング、3食の配分などです。私たちのからだには体内時計が備わっていて、この時計のリズムに合わせて食べることで、代謝がよくなります。すると、とったエネルギーをしっかり使うことができるので、走るエネルギーになります。とった栄養素の利用効率も上がるので、体調もよくなります。
土台が整ったら、次が「食事バランス」です。土台が整って代謝がよくなっていると、食事の内容を見直した時の効果も大きくなります。その次が「栄養素プラス」です。走りきるために、コンディショニングのためにとりたいサプリメントがあれば、最後にプラスしてとります。
サプリメントにすぐに目がいきがちですが、土台が整っている方がその効果も得やすくなります。まずは土台から整えましょう。

 
食コンディショニング・ピラミッド

ポイント1:朝日を浴びて1時間以内に朝食をとる

体内時計が整っていると、1日中いいコンディションで過ごすことができます。しっかり練習を積むことができ、疲労がたまりにくく、練習の効果が実感できるようになります。逆に、体内時計が乱れた状態で練習しても、疲れやすく、筋肉が減ったり、集中力も落ちて、練習の効果を得にくいだけでなく、故障したりコンディションを乱しやすくなります。
体内時計を司る時計遺伝子は全身にありますが、親時計は脳にあり、朝の光が目から入ることでリセットされます。これと同時に、筋肉や内臓などにある時計遺伝子にもスイッチが入ることで、全身がリズムよく時を刻み、いいコンディションをつくることができます。脳以外の全身の子時計にスイッチを入れるのが朝食の役割です。
したがって、大事なのは朝日を浴びて親時計にスイッチが入った後、できるだけ早めに朝食をとって子時計にスイッチを入れ、全身の時計を同期させることです。この時間がずれると、脳とからだの時計がずれて時差ぼけのような状態になります。
朝のスイッチがしっかり入ると15時間後には、メラトニンという睡眠ホルモンが出て、ぐっすり眠ることができます。これもコンディショニングに大きく影響します。
 

ポイント2:朝食では炭水化物+たんぱく質をしっかりとる

朝食を食べることで体内時計がリセットされますが、何をどれだけ食べるかによって、その効果は違ってきます。しっかりスイッチが入るのは、炭水化物とたんぱく質の組み合わせです。午前中は、1日の中で最もエネルギーを消費するので、量もしっかり食べる必要があります。
ごはんやパンなどの炭水化物が不足すると、脳にエネルギーが回らず、集中力が落ちてしまいます。朝食でたんぱく質が不足すると、筋肉が減りやすく代謝も落ちることがわかっています。朝食が菓子パンだけ、おにぎりだけ、という人は、必ず、卵や乳製品、焼き魚や蒸し鶏、納豆や豆腐などのたんぱく質食品をつけましょう。
 

ポイント3:ランチは食品数の多い献立をとる

お昼時はもっとも代謝のいい時間帯です。この時間にとった栄養素はしっかり利用されるということです。特に、夕方に走る人は、昼食でしっかり栄養素を補給しておきましょう。
麺類や菓子パン、丼ものなど、炭水化物ばかりの食事にならないように、定食やランチセットなど、食品数の多い献立にしましょう。
 

ポイント4:夕食は20時までに終了する

20時以降になると、消化酵素の分泌量は大幅に減ります。血糖値を下げるインスリンの分泌も悪くなるので、血糖値が上がりやすくなります。また、遅い時間に食べると、体内時計が後ろにずれてしまうので、寝起きが悪くなります。できるだけ早めに夕食を済ませるようにしましょう。
遅くなる時は、19時頃までにおにぎりなどの穀類を食べて、20時以降は、あぶらの少ないおかずだけ食べる、というように2回に分けましょう。
遅くなったからと言って、夕食を抜くのは逆効果です。寝ている間もエネルギーを消費しているので、抜いてしまうと、成長ホルモンが出て筋肉や骨が再生される深夜にその材料がない状態になるので、筋肉や骨が減って走力も落ちてしまいます。さらに、疲労が抜けない状態で朝目覚めることになり、翌日のコンディションもダウンしてしまいます。
 
朝、昼、夜の簡単なポイントを紹介しました。毎日きっちりとはいかなくても、少しでもからだの時計を意識して生活すると、コンディションは各段に違ってきます。ぜひ試してみてください。
 


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