「八ヶ岳の森を10回駆け抜けたランナー」
第14回野辺山ウルトラマラソンが無事に終わった。
過去最高の参加者が国内屈指といわれる厳しいコースに果敢にチャレンジ、危ぶまれた天候もスタート時には過去最も条件が良い環境でのスタートとなった。
14年前、このコースを創ったときにはあまりの高低差とダートの多さから冗談だろう?といわれたものである。
標高1900m付近に位置する八ヶ岳林道、35km地点からわずか6kmで1000m以上下り、60kmから再び11kmに及ぶ峠越えの上りが配されたコースはランナーに強靭な筋力と精神力を容赦なく求めてくる。
100kmの中にこれほどの要求を求めてくるコースは稀である。
しかし、アスファルトコースが殆どの国内100kmマラソンにあって、「ダート路面を含め、これほど圧倒的に自然地形と対峙するウルトラマラソンはここでしか味わえないだろう」というウルトラマラソンを提案したかったのである。
そんな訳で“野辺山=厳しい”というイメージがランナーの間で飛び交っていたのだが、最近のランナーに感想を聞くと「厳しいから走り甲斐がある」とか「ここを完走すればどこでも走れるから」とか言った声が多くなった。このことはウルトラランナーの走力が上がったのか、ウルトラマラソンに求める質が変化してきたのか?いずれにしても野辺山フリークが増えていることは確かである。
今から5年前、ギリシャスパルタスロンの大会会長チャキーリス氏にこの野辺山をみて頂く機会があった。スパルタは246km、野辺山は100kmだから比較の意味ではなく、日本のウルトラマラソン事情を見てもらうことが目的だった。会長からはまさに「タフなコース」という感想を頂いた。
以来、このコースを10回完走したランナーへは、心身のタフネスさを称える称号として「デカフォレスト」(ギリシャ原文はデカキスニキティス⇒10回完走の勝利者)という勲章を作った。デカはギリシャ語で「10」、フォレストは「森」という意味で「八ヶ岳の森を10回駆け抜けたランナー」という意味である。
このデカフォレスト達成者には別カラーのゼッケンと特製ポロシャツを差し上げているが、ウルトラマラソンは単に筋力や走力・精神力だけでなく、人間として懐の深さも必要なスポーツ、ということ併せ考えると形ではなく、もっと別な称え方を考えなければならない、と感じた大会だった。