アースマラソンサポート記 北米横断45日目

2009年5月 3日
 5時に私の部屋にきた寛平さんに、朝食を食べてもらう。今朝はふりかけをかけたおにぎりとブリの照り焼き、すき焼きと味噌汁。おにぎりは海苔で巻いて4個食べてもらった。出がけにデニッシュ1個と牛乳350ml。

 今日はGarden Cityからおよそ60マイル離れたR50上からスタートするため、5:30に宿を出発した。モーテルの外は細かい雨が降り、肌寒さを感じるくらい。ダグラスが運転する暖房のきいたバンに乗り込み現場に向かったが、暖かい車内でうとうと。昨日のゴールテープはR50脇を走る鉄道の線路際に置いたのでみんなで探す。みんな目標物の記憶が鮮明でなかったが、寛平さんが目ざとく見つけた。彼の記憶は抜群で、特に自分の走った道や周囲の風景にはことさら正確だ。「今日はともかく60kmか70kmはゆくでぇ。前に進まな・・」と言い置いてとことこと走り出す。

 不思議なことにいつの間にか雨は上がり、風は全くなく、気温も低くない。絶好のコンディションになっている。それが寛平さんがいる周囲だけである。四囲はまだどんより曇り、雲も分厚くいつ降り出してもおかしくないのに、である。今日は昼まで雨の予報で、60マイル先は実際雨だったからなおさらだ。「気持ちいいなあ・・」路面はフラットで通る車も少なく、無風。伴走している私も快適だ!

 歩きながらゆっくり行く、といっていながら寛平さんは大抵50mもするとコンディションを確かめるようにゆっくり走り出す。これはその日の体調をきちんと測っているのだ。9分/kmくらいのゆったりしたペース。寛平さんが言うように、ともかくウルトラランニングでは徹底してキックを使わない走り方が大事で、路面を撫でるような足運びを身につけることだ。この走り方にはいくつかポイントがあって、足首を柔軟に使うこと。つまり、自分の足長分だけ歩を進めて着地すること。足首をクネクネとした感じで使いながら走るとキックは使わずに走れる。すると脛やふくらはぎなど、着地・踏切で使う筋力を極端に節約することができるのだ。寛平さんはこの走法をしっかり体得している。更に、骨盤の後傾を意識的に減らし、むしろ前掲気味にすることで上下動を防ぐ、という走法だ。この技術は簡単にはできないかもしれず、数知れないウルトラを経験してきた寛平さんならではの熟練技術といえる。この走法が身に着くと、筋肉へのダメージが減り、結果的に疲労が少なく、故障も少ないということにつながってくる。

 カンザス州のR50は全く景色の変化がなく、走るのも退屈だ。だからこの日もあれやこれやと世間話や、冗談を言い合いながら淡々と距離を踏む作業を続けた。相変わらず牧場の牛も馬も犬も寛平さんの靴音に反応している。これも日常の出来事。変化といえば昨日から合流しているアースマラソンスポンサーのカメラマン鈴木さん(NB)と同じく時計メーカースントの成瀬さんが同行して、サポートの手伝いをしたり、撮影をしたり、計測をしたりしていることだ。当然、事前にアースでの寛平さんの頑張りや超人さは知って来ているのだが、実際の寛平さんやサポートの面々とのやりとりを目の当たりにして、新鮮さと感動を実感しているらしい。チームにとっても新顔の合流は新鮮である。

 毎朝和食を食べ始めた寛平さんの体重が戻ってきた!夕食後ではあったが130ポンド台まで回復してきたから、この調子でうまく調整してゆけば135ポンドまではあと一息だ。本日は、Garden City手前約20マイル地点でゴール。63kmを走り切った。

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